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【思い出】クソゲーと呼ばれる作品を作った話

僕にはずっと書きたいと思っていても書けないでいる話がいくつか存在する。
それは、実際のゲーム開発のエピソード。

苦労した話や技術的な話、ゲーム開発の現場で実際に起きた出来事なんかは、
ネタとして最高だと思うんだけど、守秘義務があって書くことが難しい。

この守秘義務というのが厄介で、一体どこからどこまでが適用されるのかが分からない。
契約書を見る限り、周知されていない情報は全て当てはまるみたいだけど、
損害が発生した場合は賠償請求をするとも書いてあることから、
逆に考えれば損害が出ない情報は話してしまって構わないともとれる。
ただ、何が損害を与えるのかは分からないし、損害が出なくても印象を悪化させるのはよくない。

だから、まずそうな話は避けるし、タイトル名を連想できるような情報も伏せるので物足りないかもしれない。
それでも良ければ、続きを読んで欲しいと思う。
 
 
◆始まり

ある日、フリーランスのゲームプログラマーをしている僕に、元同僚の友人から仕事のオファーがあった。

内容は詳しく書けないけど、ある版権キャラクターを利用した体感ゲームで
プログラマーは少数、開発期間は半年というものだった。
話を聞いた僕は正直断りたいなと思った。

というのも、プログラマーは今回のために集められた傭兵部隊でメインプログラマーがおらず、
対応ハードに関して経験がある人がいなかったからだ。
その上、開発期間が半年というのはマスターアップまでの期間で、実際はもっと短い。
その間に仕様書の確定、システムの構築、ゲーム作成、調整までの全てを終わらせなければならなかった。

統制が取れるかどうか分からない傭兵部隊で、期間だけ決まっているスケジュール……
明らかにやばい匂いがプンプンする。
でも大抵のプロジェクトはそんなもんなので、仕事を選んでいたら働けない。
それに友人のいる会社だから、精神的に追い詰められるような状況にはならないだろう、
そんな気持ちでこの仕事を引き受けることにした。

プロジェクトに参加すると、既に二人のプログラマーが、僕より先に仕事を始めていた。
環境を整えていると、そのうちの一人、Sさんからこんなことを言われた。

「ねこすじさん、C++とか使いますか?」

C++とは何かというとプログラミング言語のことで、C言語よりも新しい規格の言語であり、
オブジェクト指向プログラミングが可能になったものだ。
僕みたいな比較的に若いプログラマーは割と普通に使えるんだけど、ベテランだとそうでもない。
僕がめちゃめちゃ使いますとこたえると、こう返された。

「使ってもいいですが、こっちはこっちで勝手に作っていくのでお願いしますね」

ようは、SさんはC言語しか使わないから、C++を使うならそれに関わる問題は
そっちでなんとかしてくれということだった。
C++には中身が見えない機能も多く、使いこなすほどメモリ管理周りで問題が出ることが多い。
オブジェクト指向プログラミングを強みとしている僕は、少し不安を覚えつつも、快く了承し、
今しがた設定を終えた環境を確認してみた。
すると、驚いたことにゲームとしての基本的なシステム(骨組み)がほとんど出来上がっている状態だった。

このSさん、実は有名なアクションゲームのメインプログラマーをしていたことのある
凄腕のプログラマーさんだった。
やばいプロジェクトだと思っていたけど、来て初日で成功の兆しが見えた出来事だった。


◆ゲームじゃないゲーム

このゲームの悲劇はここから始まった。
事の発端は、プロジェクトが始まってすぐ、プロデューサーに仕様書の確認をしてもらった時のことだった。
プロデューサーから、
「このゲームは子供向けのゲームだからゲーム性を取り除いてほしい」
という要望が出された。

具体的には、子供向けとは幼稚園児とかそういう年齢のことで、
ゲーム性を取り除くとは、ゲームスタート、設定された目標を達成させる、
ゲームクリア、リザルト画面といった一連の流れをなくすということだった。

僕らはみんな困惑した。
そんなゲーム聞いたことが無い。
というかシミュレーター……?

それに、子供向けでも別にゲーム性があってもいいのではないかと思った。
でもそれが正しいかは分からない。
そもそも子供向けのゲームなんて作ったことが無いし、確かめようがない。
それはある意味、『おかあさんといっしょ』を作りたいと言っている人に、
『プリキュア』なら大人も楽しめますよ、といった無粋なことを言うようなものだった。
(そもそも外部のプログラマーの僕は、何か意見を言えるような立場にない)

そんなわけで、ゲームなのにゲーム性のないゲームというおかしな方向性で開発が始まった。


◆順調な開発

ある日のこと、僕は4時間近くどうしてもうまくいかない部分があり、頭を抱えていた。
僕はプログラミングは得意だけど数学は苦手で、不幸なことにこのゲームは
短期でありながら、フライトシュミュレーターなみの3D技術を駆使したゲームだった。

期間的にこれ以上時間が掛けられないと思った僕は、試しにSさんに聞いてみると
「ちょっと待っていてくださいね」
と言われ、5分とかからずに計算式を書いて送ってくれた。

さすがSさん。
僕の抱えていた問題はあっという間に解決してしまった。
こういった出来事以外にも、Sさんは元々持っている技術というものが多く、
ことあるごとに技術の提供をしてくれた。
メインプログラマーはいないといったけど、
実質Sさんがメインプログラマーとしての働きをしてくれていたと思う。
人材ガチャでSSRを引き当てたと言っても過言ではないだろう。

勿論、僕は僕で突出した部分があり、オブジェクト指向でシステムを構築したら、
それを他のプログラマーと共有し、プロジェクトに貢献した。
他のメンバーも、Sさんと僕でカバーできない部分をうまい具合にフォローしてくれて、
開発はとても順調に進んだ。

なんだろうね……。
大抵どんなプロジェクトも、ダメな人って一人や二人存在するもので、
それは技術力があるか無いかじゃなくて、
気持ちよくコミュニケーションをとれるかどうかの問題なんだよね。
そういう意味合いでは、このプロジェクト程気持ちよく仕事ができたことは無かったと思う。

ただ、ゲームの内容に関してはよくわからなかった。
というのも、大抵、売れるゲームというのはデバッグ中少しプレイするだけでも
何となくわかるもんなんだけど、このゲームに関しては全く想像ができなかった。
でも、クライアントの方で実際に子供たちに遊ばせて、反応を見ながら作っていたので
首を傾げつつも、子供にはちゃんと喜んでもらえているのだという認識だった。


◆ロムサイズ足りない事件

プロジェクトが後半になると、ある問題が浮上してきた。
それはデータサイズの問題。
低価格で提供する予定だったこのゲームでは、データサイズの上限が低く、
今の状態だとロムに収まりきらなかった。

データの圧縮とロード時の展開は、Sさんの作ったシステムを使っていたんだけど
プログラム側での対応は、SSR級プログラマーのSさんが無理だというので、
それ以外の手段を取る必要があった。
そうなると、問題の解決方法は、素材のサイズを小さくして容量を押さえるか、
ロムのサイズを一回り大きくするかの2択しかなかった。

素材のサイズを変える場合、単純にコンバートしなおせばいいという話ではなく、
デザイン自体に修正を加えなければならない。
さらに、それに合わせてプログラマーの作業も必要になってくる。
ロムサイズの変更の場合、販売価格が少し高くなるけど、特に作業は必要なかった。

そこで、急遽プロデューサーとディレクターで話し合いの場が持たれたんだけど、議論は膠着。
プログラマー陣も呼ばれることになった。
ただ、僕としては、どうするべきかは決まっているのだから、
話し合いで工数を消費するのは無駄だと思っていた。

そこで僕は、具体的になんていったのかはよく覚えていないんだけど、
データサイズを小さくするとクオリティが下がるし、今から素材を作り直すような時間は取れないので、
ロムサイズを大きくするのが最適だということを言ったと思う。
それも眉間にしわを寄せつつ、かなり強い口調で。

効果は抜群で、話し合いは速攻で終了。
プロデューサーはロムサイズを大きくする方向で、会社の方と相談するという流れになった。

話し合いを終えると、開発メンバー達は『よく言ってくれた』と僕のことをねぎらった。
しかし、そのすぐ後にSさんが
「ねこすじさんすみません。一部圧縮されてないファイルがありました」
と言ってきた。
どうやら、ファイル名に特定の文字が入っていると圧縮されなかったみたいで、
全部圧縮したら、問題なく容量が収まるということだった。

僕の顔から血の気が引いた。
Sさんの能力を信用しきっていたからこその強気だったんだけど、途端に立場が悪くなってしまった。
僕はバツが悪くて謝らなかったんだけど、プロデューサーは不満を言うこともなく、ただほっとした様子だった。
こうしてロムサイズ足りない事件はあっという間に終結した。
ちなみに、プロデューサーには今でも時々思い出しては、心の中で謝罪しているw


◆プロジェクト終了後の話

こんな感じで、プロジェクトは特に問題なく (?) 終了した。
しかし、いざ発売が開始されると辛辣な批評がちらほら目に付くようになった。
中には数百行に及ぶ大作や、わざわざ開発会社を名指ししているものまであり、
悲しいことに、僕らの作ったゲームはクソゲーという評価が定着してしまった。
ゲームとしての体をなしていないのは開発会社のせいじゃないんだけどね……。

そもそも、その部分も子供向けという意味では、悪いものでは無かったと思う。
子供のおもちゃって別にゲーム性があるわけじゃなくて、ただ触って反応を楽しむようなものばかりじゃない?
大人が触っても1時間と楽しめるものの方が少ないだろう。
そうい意味では、費用対効果は素晴らしく、プロデューサーの着眼点はなかなかのものだったとも言える。

ただ酷評を書いてしまうユーザーの気持ちというのも理解できる。
というのも、このゲーム、明示的に子供向けとは書いていない。
全年齢対象な上に、大人も楽しめると誤解してしまうような売り出し方をされている。

実際、どのレビューもゲーマーが子供向けのゲームをガチで遊んだ意見がほとんどで、
そういう意味ではある意味被害者ともいえる。
勿論、僕自身、このゲームを面白いとは思わないんだけど、子供向けに作ったゲームで、
値段もそれなりなのに、クソゲーと呼ばれるのはどうなのかなと思う。

だって、フィギュアオタクが安いソフビのバービー人形を同列に並べて評価はしないじゃん?
だからこのゲームに対しての誤解を解きたいんだよね。
思い入れのあるプロジェクトでもあるし。
まぁ、ソフト名を明かすことは出来ないんだけど、書くことで僕の気持ちもだいぶ晴れたと思うw
 

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